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段ボールベッドが命を守る!

東日本大震災の支援活動報告

震災支援活動(ダンボールベッド)

小学校94期生 水谷嘉浩

段ボールベッドが命を守る!

昨年の東日本大震災から早くも1年半が過ぎ、被災地では震災以来2度目の冬を迎えようとしています。未曾有の大災害と言われ、南北500㎞に渡り大津波が押し寄せ約20,000人にも及ぶ死者行方不明者を出しました。また避難者数はピークで40万人、現在でも約33万人の方々が(平成24年9月6日復興庁発表)避難生活を余儀なくされています。

そんな中、発生直後の避難所で大勢の避難者が、低体温症で亡くなっているという事をメディアで知りました。“津波を免れた幸運な方々が避難所で寒さの為に亡くなっている。これは何とかしなければならない”と思い、生業としている段ボールで簡易ベッドを作り、届けようと思い立ちました。ツイッターで試作品の写真を流したところ石巻赤十字病院の医師に繋がり、自社で生産した150床の段ボールベッドを積んで4月30日石巻市に向けて出発。避難所へ寄贈しました。さらに医師は、雑魚寝の避難所では低体温症だけではなく、エコノミークラス症候群廃用症候群(寝たきり)のリスクがあり簡易ベッドの導入を各所に訴えたのだが、なかなか実現しない、と言うので私は協力を約束しました。以来計20回被災地入りし、初めの10往復はトラックを運転して、東北3県や台風12号の避難所に段ボールベッドを配って廻りました。

災害発生直後の避難所。どこの避難所も人口密度が高く雑魚寝を強いられている。

屋内にもかかわらず、上着を着て雑魚寝の避難生活をしている被災者

医療関係者と共に避難所に段ボールベッドを導入。

陸前高田市の避難所。足腰の悪い高齢者にとってベッドは起き上がりやすく、寝たきり防止になる。

雑魚寝で車いす生活になったが、ベッドを使って1か月で自立度が回復し歩けるようになったおばあさん。

床の埃を吸って咳が止まらなかった子供たちも、ベッドを導入後は咳き込まなくなった。

 

しかし、度重なる東北入りに体力も限界になり、資金面でも業界大手に協力を依頼し活動を継続。台風12号の和歌山県や奈良県も含め、最終的には合計3,000床を避難所や仮設住宅に寄贈できました。

 

本当は困難だった段ボールベッドの導入

活動の中で、エコノミークラス症候群を研究している新潟大学の医師とも連携を始めました。その医師とも避難所での簡易ベッドの必要性を訴えてきたのですが、今まで国にも地方自治体にも簡易ベッドを導入する防災マニュアルが無い為なかなか理解が得られず、被災地隅々まで拡げることはできませんでした。実際、50ヶ所以上の避難所を訪れましたが、前例が無いという理由で80%以上が断られたのです。その結果の3,000床でした。

 

避難所で雑魚寝の生活が長期にわたると、エコノミークラス症候群のリスクは高まるのですが、石巻市の避難所では、その原因となる血栓が実に45%もの高い発症率で見つかりました。また一度血栓が見つかると5年後の脳梗塞の発症リスクが6倍にもなることも判っています。

その対策として避難所に簡易ベッドを導入すると、血栓症をはじめ高齢者の活動性などが改善する事が、最近の研究で判ってきました。

全国の自治体と防災協定を締結

この仕組みを全国に作らないと、次の災害でも同じことが起こると考えた私は、全国の自治体に簡易ベッドの必要性を訴え、現在まで65の市町村と防災協定を締結しました。この協定は自治体が段ボールベッドを備蓄するのではなく、災害が発生したら自治体の要請に応じて72時間以内に届ける仕組みです。段ボールは3日もあれば短時間に大量生産できるのですが、自治体は予算を取らずに、もしもの時の安心が手に入ります。私はこの活動はあくまでも災害時の支援活動と捉え、殆どボランティアで行っています。

 

防災基本計画に記載

全国に自治体は1,800近くありますが、全てに拡げるのは容易ではありません。そこで政府にも訴えて、内閣府の中央防災会議の防災基本計画に記載してもらうように、前出の医師と共に何回も足を運んだ結果、国会での質疑を経て9月6日発表の改定版に史上初めて、“簡易ベッド”の記述が入りました。これを受けて、全国の都道府県及び市町村は、地域防災計画にも反映させる作業に取り掛かることになり、そう遠くない将来、避難所には簡易ベッドが届く仕組みが全国に出来上がると、期待しています。

平成24年8月31日堺市と段ボールベッドに関する協定締結

政府中央防災会議の防災基本計画の中に、簡易ベッドの記述が初めて入った。

 

震災関連死を減らす

阪神大震災では921人と言われた震災関連死は、東日本大震災では1年間で1,632人を数えました。これは政府認定ですので、その後ろには認定されなかったもっと多くの震災関連死や関連病があったと思われます。様々な要因があると思うのですが、避難所の環境改善に取り組む事で、そのうち少しでも減らすことが出来るかもしれません。そしてそれは、簡易ベッドの導入であり雑魚寝を無くすことが大変重要です。繰り返しますが、ストップザ雑魚寝!

避難所にいる人は命の助かった幸運な方です。2次的な健康被害を減らし、本来助かる命が助かるように、今後も活動を続けて行きたいと思います。

 

 

活動の一部始終をブログに残しています。

http://ameblo.jp/mizutanijpacks/themeentrylist-10050765204-1.html

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昨年の夏、報道番組の特集で取り上げてもらいました。

http://www.youtube.com/watch?v=2H1u-b4QDRw

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