コラム , 恩師のいま

西浦 誠 先生 退職のご挨拶

心豊かな退職の日に

 退職の日が近づくにつれ、卒業生が学校を訪ねてくれることが多くなりました。今や 40 代、50 代になった卒業生と再会するとき、なにやら不思議な感覚に囚われてしまいます。 私たちは時間の流れをもつ 3 次元空間に暮らしているのですが、学校コミュニティーにお いてはこの時間軸がゆがんでいるような気がしてなりません。在学当時の面影に向き合う と、20 年や 30 年の歳月が流れたとは、全く信じられないような感覚に陥ってしまうので す。卒業生の子どもが入学し、数学を教えたり、クラス担任をしたり、或いは保護者となっ た卒業生が PTA の役職を務めてくれたりすると、更にその感覚が強まります。

 追手門の卒業生は、卒業後も結びつきが強く、今も年に何度か会って、この時間軸のゆが みを大いに愉しんでいるようです。大手前中高のブランド力のひとつは、この「学校コミュ ニティーのネットワーク」にあるのではないでしょうか。また、仕事の場や社交の場などで、 ひとたび追手門の卒業生どうしが出会うと、例え異学年であったとしても、どんどん親交が 深まっていきます。学校コミュニティーにおけるつながりは、深まるのみでなく、広がりを 見せることで、より輝きを増していくのです。

 教職員で力を合わせて「未来の教室づくり」を目指した日々は、私にとって愛おしい宝物 です。そして、「学校コミュニティーのネットワーク」の不易と、「未来の教室づくり」の流 行とを、同時に味わうことのできた私は、本当に幸せ者でした。心豊かに退職の日を迎える ことができますことを、すべての皆さまに心より感謝申し上げます。

 私は、生徒、保護者、卒業生、そして先生方に対して、「私学・追手門学院のご縁は一生 ものです」と言い続けてきました。よって、私も退職後は、この教えを自ら体現したいと思 います。27 年後、西暦 2050 年に両中高は創立 100 周年を迎えますが、杖を突いてでもお 祝いに参上することを、ここにお約束します。時間軸のゆがみを楽しみにしながら。

 皆さまには、これからもどうか元気に明るく、ご活躍下さいませ。追手門学院の今後益々のご発展を、心よりお祈り申し上げております。 

2023 年 3 月 28 日

            西浦 誠