追手門学院大手前高等学校37期 1組 22年後の誕生会
22年前に高校3年生だった37期生に、22年後の40歳(不惑・強壮)の誕生会の約束が実現した。発端は、卒業を控えて大学入試で忙しく多感な年代の学級担任をしていたクラスの全員から、私の40歳の誕生会を祝ってくれた時の約束である。
その日の出来事は、今も鮮明に脳裏に残っている。
職員室まで呼びにきた37期生に先導され、カーテンを閉めて薄暗く演出された教室に入ると、全員が座っている。私が教壇に立つと、全員がクラッカーを鳴らし、誕生の歌を歌ってくれる。次のプログラムは、女子生徒が製作してくれたバースデーケーキのローソクを消した。さらに誕生祝いの品をもらう。この時には眼に涙があったが、暗くて気づかれていないと思う。感激の誕生会は、言葉では表現しがたいパワーをもらう。この時に、22年後の37期生が40歳になった年に誕生会をすることを約束し、卒業文集に要項を記載した。10代の高校生には、40歳の年齢は遠い世界の事である。
平成22年が約束の年であり、2月に幹事をお願いし、私の誕生月である10月末に約束の誕生会を設定した。会場は、この時の卒業生が勤務する「日本の迎賓館」と呼ばれる開業120周年を迎えたホテルである。平成22年はくしくも私が教壇に立って40年目になる。「事実は小説よりも奇なり」で、縁の深さを痛感する。そこで、当日のプログラムに、「40歳の生徒」を対象として講義をさせてもらうことにした。
地図を学ぶ事がライフワークの私は、「地図を楽しむ=人間生活に必要な水と塩=」をテーマとした。無論、現地調査を含めての教材である。実に心地よく楽しい講義であった。他のプログラムは、幹事に任せた。
会場は夜景の素晴らしい上階を準備してくれた。世話をしてくれるのは、卒業生の下で働いているホテルマンである。
乾杯からの会食では、卒業生自らの人生を振り返る懐かしさがメインである。一人一人の思い出話しは、出会いから28年間の様々な話題を提供してくれた。記念品として準備してくれたのは、バームクーヘンである。「木の菓子」の意味のごとく、人生の年輪を表現している。箱には、卒業文集の表紙・当時のクラス写真・新聞に記載された誕生会を紹介した文章が載ってあり、幹事の暖かい心遣いに感謝する。もう一つの地球儀は、居間に置いて孫と楽しんでいる。おじいちゃんバカである。バースデーケーキの味も、美しい花束も、そして卒業生との会話も、私にはかけがえのない「絆」である。同時にお世話になった保護者の皆様へ感謝の意を伝えてくれるように伝言した。「絆」は、保護者の協力と支えがあっての成果である。
今は60歳代の青春を謳歌し、地図を学びながら次の目標を楽しんでいる。
結びに、私が学級担任・教科担任として関わった全ての皆様のご健勝を祈念いたします。
元大手前中担任 池田 晶一